
市役所で、銀行の窓口で印鑑を使った経験はどなたでもあるでしょう。(参考リンク ... 印鑑ダイレクト ... 印鑑)
印鑑は私たちの生活の中で重要な役目をはたしています。ここに「記名捺印」をしてくださいという経験があるでしょう。多くの場合は本人確認・権利義務の所在を証明するためなどに使われますが、違った楽しみ方もしてみましょう。
印鑑で楽しむといってもピンとこない人が多いでしょうが、印鑑作成は年齢・お金の余裕があるかないかにかかわらず楽しめるものです。
印鑑の歴史。
荷物に封印をするために古代中国で使われたのがはじめだそうです。税金を現物で支払う場合に、荷造りをして紐で縛ります。その紐の交叉したところに練った泥を落とします。そこに印鑑を押して泥を乾かしたといいます。
目的地に到着する前に物が盗まれるのを防ぐ意味があったそうです。固まった泥が壊されている場合には、なにか異常があったとわかりますね。現在私たちの生活では「実印」「三文判」を使っているだけ、という人が多いと思います。
今回は「実印」以外の印鑑で楽しむ方法を考えましょう。さすがに実印を扱えば重大事を招きかねません。
手紙やハガキの最後に押してみよう。
手紙の最後に、あなたの印鑑が押してあれば、その手紙は間違いなく優雅です。ですからこの印鑑は「雅印」と呼ばれています。印面はあなたの苗字でも、下の名前でも、フルネームでもよいです。あなたのかわいがっているペットの似顔絵でもよいのです。
古代中国の印鑑には龍や象などの動物や植物のものもたくさん存在します。便箋の大きさに見合ったサイズの印鑑を作りましょう。もちろんハガキのばあいには便箋の時よりは多少小さいサイズの印鑑がよいでしょう。手紙やハガキの最後にあなたの印鑑が朱色でポンと押されていれば、うらやましがる人も必ずいます。
手紙やハガキ以外に楽しみ方はないのか。
無限です。あなたの集めた蔵書の最初に押しても最後に押してもよいです。蔵書印と言います。またあなたが書道を趣味にしているならば、作品の最初や最後に押す印鑑も欲しくなるでしょう。公募展に出品している方ならばお持ちでしょうが、最初に押す印鑑はお持ちではないでしょう。
冠帽印・関防印などと呼ばれる印鑑ですが、漢詩などの中からよい言葉を選んで印鑑の文句に使っている場合が多いです。
印鑑の材料は。
楽しむのが目的ですから、いままでの常識から解放されましょう。決まりはありません。以前消しゴムハンコが大流行しました。あれも立派な芸術です。消しゴムとカッターさえあればだれにでもできます。一般的な篆刻の場合についてひとことお話しします。
ほとんどの場合「ヒスイ」と言ってよいです。翡翠(ひすい)ですがさほど高価なものではありません。便箋に押す程度のものでしたら100円から200円程度です。もちろん高価なものはいくらでも存在します。印鑑材料としての石の世界では「田黄(でんおう)」石や「鶏血(けいけつ)」石が横綱級です。
それ以外にも高価な石はたくさんあります。大きな文房具店で入手できる程度の材料で始めてみましょう。経験を積んで知識が増えたら陶磁器や金属に彫ってみたくなるかもしれません。
印鑑の書体はどうすればよいか??
字典で調べましょう。さまざまな書体があります。ご自分の好きな書体で彫りましょう。教科書のようなきっちりした書体は楷書、少しリズム感を出した書体は行書、くずし字は草書と呼ばれることが一般的です。この書体にこだわる必要はありません。
ご自分の姓名が4文字ならば楷書・行書・草書をすべて使った印鑑を作ってよいのです。ネコや犬をかわいがっている場合にはペットのイラストを入れたらどうでしょうか。とにかく自由なのです。
ところで何を用意しなければならないのか。
さまざまな考えがあるでしょうが、私なりにかんがえる必要なものを列挙します。1つ目は字典。広辞苑のような辞典ではありません。とにかく字(ほとんど漢字です)を集めたものです。これはどうしても必要です。ペットのイラストなどだけを彫りたい方には必要ないでしょうが、字を彫る場合には、これがなければ始まりません。
2つ目は石です。あまり背伸びをせずに安いもので十分です。定年退職後に初めてギターを買った方が100万円以上の名器を買ったという話も聞いたことがありますが、やめましょう。石の鑑定は大変に難しいものです。失敗してしまう恐れもあります。
3つ目は刀。もちろん篆刻用です。先が平らな刀や斜めになっている刀など様々ですが、最初は一本あれば何とかなります。4つ目は紙やすりです。100円ショップで入手できます。何に使うのかと言えば、まず石に彫るのが失敗だった時にその面を紙やすりで削ります。
初めからやり直すことができます。次に刀が切れなくなったときに使います。紙やすりで刀を研ぐわけです。5つ目は朱肉。篆刻の朱肉は朱泥(しゅでい)と呼ばれます。ずいぶん種類があります。黄色やオレンジ色に近い朱色やかなり黒みがかった朱色など、色もサイズも多く存在します。
手紙・はがき用ならば一番小さいサイズのもので足ります。もちろん100円ショップにあるものでも使えます。
具体的にいくらかかるものか。
用意するもので具体的お話しましょう。消費税は考ずにおおよその価格です。初心者向けの材料で考えます。字典は2000円程度、石は一本200円程度です。刀は一本700円程度です。紙やすりは100円ショップで入手できますので100円です。
朱肉ならば100円、朱泥ならば800円です。石と刀だけでできるかと言えば少々きついです。合計金額は4000円から5000円程度になります。
あなたはどこからどこまでやらなければならないか。
話の順序が逆になってしまいましたが、始めから最後まであなた自身がやらなければならないというわけではありません。用途を決めて、彫る内容を決めて、予算を決めてプロにお願いすることも可能です。無理をせずに楽しみましょう。
この場合、あなたご自身が篆刻についてしっかりとした知識があれば、楽しんでプロにお願いできますし、騙される危険も少ないでしょう。
本当に楽しめるの。
篆刻はとても優雅な趣味だと思います。もちろん書道もよいのですが、書道に比べると篆刻はメリットが多いように考えます。まず何と言っても書道に比べて初期費用が格段に安いです。書道の漢字用の筆は羊毛の高品質なものは安くても10万円以上します。
長く書道をしている方に10万円の筆だといっても驚かれることはありません。私の知り合いの書家は300万円の筆を購入しました。さすがに300万円は驚きますが、10万円・20万円の筆は、あまり高価な筆とは言いません。
書道の場合には硯や文鎮、下敷きなどが必要です。それに加えて練習後の片づけは大変です。筆を洗うのに時間もかかりますし、墨で回りが汚れてしまいます。こういえば書道を目の敵にしているようにとられてしまうかもしれませんが、篆刻との対比では篆刻に軍配をあげてしまいたくなるのです。
篆刻で字を彫る場合に、もっとも重要なものは下書き段階での「書」であることは分かっているのですが。